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躊躇いながらユキに言われるがままに悟に電話を掛ける。
これ以上拗れない様に、できるなら電話に出ないでほしいと願うが、私の願いも虚しく3コールをカウントした途端、コール音が途絶える。
『ー―はい?』
聴こえてきたのは勿論、携帯の持ち主の悟の声。
「もしもし?――着信に今、気づいて……、何の用?」
恐る恐る訊ねる私の微かな変化も見逃さない様に私を見つめるユキの視線に息苦しさを感じる。
『着信?――何のことだ?俺は掛けてないけど……』
「え?でも二回も着信履歴あるんだけど」
予想と反して全く身に覚えがないと言い切る悟に困惑し、頭の中はプチパニック状態。
『酔っぱらって掛けたのか?』
私の心情を露知らず笑い、あまりにも呑気な事を言う悟に苛立ちを覚える。
「もう!そういうのはヤメてよ!そのせいでこっちは……」
『あれ?今度こそ旦那に誤解でもされて喧嘩でもした?』
酔っているせいか真剣に怒っているにもかかわらず、悟はどこか楽しそうに茶化してくる。
「だったらどうなの?嬉しい?私たちの邪魔をして何が楽しいの!?」
あまりの悟の態度に苛立ちのピークに達した私は完全に開き直り、感情任せに言葉を吐き捨てた。
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