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いつもの俺なら”そうなのか”と軽く笑い流し電話を切って終わり、のはずだったが今日は違う。
三上は咲穂の会社の人で、先輩――そう頭では分かっているし、理解している。
でも今の俺には三上は”咲穂の元彼”で”どうもいけ好かない相手”でしかなかった。
「――本当に他の誰かが勝手に掛けたんですか?それに今は茅原ではなく各務です」
何をムキになっているのだろう……
口から出てくる言葉は自分でも驚くくらい冷静さの欠片もない言葉ばかりで、止める事ができない。
『え?どういう意味ですか』
「ちょっとユキ、何を言っているの!?」
電話の向こうで息をのみ驚く三上の声と、血相を変えて俺を止めにかかる咲穂の声が重なリ合う。
それすらも腹立たしく感じてしまう俺は重症なのかもしれない。
「ハッキリ言いましょうか?本当は自分が咲穂に掛けてきたくせに俺が出たものかだら咄嗟に他の人が掛けたってことにしたんじゃないんですか、って言ってるんですが」
止めにかかる咲穂を振り払い立ち上がると俺は更に言葉を続けた。
『本気でそんなこと言ってるんじゃないですよね』
三上の声色がガラリと変わりピリピリとした空気へと一変する。
「本気か、そうじゃないかは自分が一番よく分かってるんじゃないですか?もう咲穂とは何でもないって顔をして実は俺たちが別れればいいって思ってたりして……」
「止めてよ!悟はそんな人じゃない!!」
咲穂の言葉に我に返り、そして耳を疑った。
――今、なんて言った?
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