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――悟……
俺の前では”三上さん”と呼んでいた咲穂が咄嗟に元彼の事を、そう呼んでしまうのは仕方のない事なのかもしれない。
「何でお前があいつを庇うようなことを言うんだ?」
でも実際に訊いて勿論、気分の良いものではないし、ましてや肩を持つような言い方が解せなかった。
「あっ……」
睨むように見る俺に咲穂はしまった、という顔をして口を噤む。
「再会して気持ちがグラついた?っていうか、もしかしてあいつと何かあった?俺に隠してたんだもんな」
言ってはいけないと……
言わない様にと心の中にとどめていた言葉だったのに、完全に頭に血が上ってしまった俺は我を忘れ捲くし立てるように咲穂に投げつけた。
『おい、いい加減にしろよ。何かあるわけないだろ、変な誤解をするな。夫婦なら、それくらい分かるだろ!?』
俺たちの会話を電話越しに訊いていた三上が苛立ちを帯びた声で割って入り俺を窘める。
でもその言葉が……
その行為が……
余計に俺の心に拍車をかけ、悪循環を生む要因でしかなかった。
「部外者が夫婦の会話に入ってくるな!!」
言い捨てるように言うと一方的に切ると力任せに携帯を投げ捨てた。
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