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「ちょっとユキ!?携帯を投げつけるなんて酷過ぎる!!」
咲穂は音を立てばらけた携帯に血相を変え飛びつき俺を睨みつけてきた。
「酷い?悪いのは咲穂だろ!二人の間に秘密はなしだって約束してたよな!?」
俺の指摘に咲穂は返す言葉もないらしく、きつく口を結びバツ悪そうに表情を曇らせる。
否定できないっていうことは、やっぱりどこか後ろめたいことがあるという証拠なのだと解釈しざるを得ない。
「確かに悟の事を黙ってたのは悪いって思ってる!でもそれはユキに変に誤解されたくなかったからで……。隠したくて隠してたんじゃない!」
まるで懇願するかのように俺を見上げ訴える咲穂の言葉も今の俺には届かない。
少しおかしいなと思いながらも信じているから、と……
いや、信じたい、と……
思っていたのに、こうも二人の現実を目の当たりにすると信じきれない。
いつもなら……
昔の俺なら、もうこれで”すべて終わり”だったのに、どうしても咲穂相手だとそうもできない。
三上に対しても、咲穂に対しても腸が煮えくり返りそうなくらい腹立たしく感じるのに、どうしても嫌いになれない。
――あいつには渡したくない!っていう気持ちの方が断然大きい。
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