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「ちょ、やだっ。ユキ!」
咲穂の本気の抵抗も俺にとっては容易いもの。
でもあまりに暴れる咲穂を扱うのが面倒になり、半ば強引に抱き上げると寝室へと足を進めた。
ドアの向こうに広がるのは明かりひとつ灯っていない薄暗い寝室。
「下ろしてよ!!」
俺が本気なのだと悟った咲穂は手足をバタつかせ、更に暴れ出す。
俺は叩かれようが蹴られようが気にすることなく、真っ直ぐ部屋の中に足を踏み入れ、ベッドへと向かうと咲穂の希望通りベッドに放り投げるように下ろした。
ベッドの上に咲穂を下ろしたと同時に俺はその上に覆いかぶさるように咲穂との距離を縮める。
「冗談だよね……」
「何が?」
自分でも分かるくらい声は冷ややかで、そして咲穂を威圧するように見下ろす。
「こんなことして何が証明できるっていうの!?ユキ、絶対に間違ってる!!こんなのおかしい!!」
ベッドの上で必死に後退りながら、俺がこれからしようとすることを全力で否定し続ける咲穂。
――何が間違ってる?
間違ってるのは俺ではなく、紛れもなく咲穂の方だ。
「何が間違ってる?何がおかしい?あいつとは何もないんだろ?じゃあ、何も問題ないだろ、俺たちは夫婦なんだから……。それとも見られたくない跡があったりして」
言ってはいけないことだと、分かっていても咲穂の言動すべてを裏目裏目にとってしまう。
――もう疑い出したらきりがなかった……
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