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「そんなものあるわけないじゃない!冗談でもそんなこと言わないでよ!」
俺の下で咲穂が叫び、強気にも睨みつけてきた。
「本当に冗談で済むのか?じゃあ、隠さずちゃんと見せろよ!」
最後のあがきとばかりに暴れる咲穂を押さえつけ、逃げられない様に手首を上で固定しきつく掴んだ。
そして空いているもう片方の手をゆっくりと咲穂へと伸ばす。
「本当に止めて!こんなのはヤダ!!」
涙目で訴える咲穂に多少、心は痛み気持ちが揺らいだが、すぐに迷いを振り払い咲穂の服に手を掛けた。
ビリッ!!
破るつもりなんてなかったのに焦りと苛立ちが手元を狂わせ、咲穂の服を破る結果となってしまった。
瞬間、上昇しきっていた血の気が怖いくらい一気に引いてゆく。
冷静さを取りした俺の下では涙で頬を濡らし、堪えるように下唇を噛みしめる咲穂が居た。
「悪いっ」
慌てて咲穂の腕を解放し、上から飛び退く。
でも咲穂はなかなか起き上がろうとはせず、身体を強張らせたまま動こうとはしなかった。
「――咲穂?」
心配になりそっと手を伸ばした瞬間、咲穂はもの凄い勢いで身体をビクつかせ、そして微かな悲鳴と共に俺の手を払いのけた。
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