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「まだ信じられない?全部脱いで見せたら信じてくれるの!?」
呆然と立ち尽くす俺に咲穂はそういうと下着にまで手を掛けだした。
「止めろ!分かった……、分かったから!!」
慌てて咲穂に駆け寄り、その手を掴み阻止する。
「痛っ」
そんなに強く掴んだつもりはないのに咲穂は大袈裟なくらい痛そうに顔を歪めた。
不思議に思い手を離し見ると遠目では分からなかったが、咲穂の手首は俺の手の跡がくっきりとついていて思った以上に痛々しいものがあった。
「悪い、こんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どんなつもりなの?――ユキは私が何を言っても信じられないんでしょ?私にはどうすることもできないよ……」
言葉を詰まらせながら涙ながら俺に訴える咲穂の姿に胸が痛んだ。
返す言葉が見つからず黙り込む俺に咲穂は何かを堪えるようにゆっくり深い息を吐く。
そして脱ぎ捨てた服をそのままにクローゼットから新しい服を出し素早く着替えると、そのまま何も言わず寝室を出て行ってしまった。
少しの間を空けて咲穂の後を追うように視線をドアの方に向けた俺の耳に玄関のドアが閉まる重々しい音が寂しく届いた。
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