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「うーん、ごめん。行きたいのは、やまやまなんだけど今日は早く帰れるって言ってきちゃったから」
力づくでも連れていかんとする志帆にやんわりと断りをいれる。
「えーっ。この間も、そう言って断ったじゃないですか」
「仕方ないだろ?茅原は結婚してるんだから、独身組の俺たちとは違うの」
不満そうな声を上げる志帆の後ろから急にひょっこりと顔を覗貸せたかと思うと私たちの会話に口を挟んできた。
「近藤さんと一緒っていうのが何か嫌です。私はまだまだ若いんで」
強がりか、それとも本気で嫌がっているのか、近藤くんの方に向き直りきっぱりと言い切る志帆に思わず笑ってしまった。
――だって、数年前の自分を見ているようだったから……
あの頃の私は結婚願望こそあったが、さほど結婚に対して危機感のようなものはなかった。
当時、悟と付き合っていたという余裕と、自分はまだまだ若いという意味の分からない自信?
経った数年で、こんなにも心に変化が起こるなんて思ってもみなかった、あの頃の私。
「じゃあ、仲間外れはお先に失礼します。楽しんできてね」
傍から見たら、じゃれているようにしか見えない二人にわざと深々と頭を下げ、その隙に帰ることにした。
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