最悪な夜

5/24
前へ
/35ページ
次へ
「仕方ないな。でもコレで終わりだからな」 粘る私に根負けしたという感じで、ユキは渋々重い腰を上げ、冷蔵庫からビール取ってきてくれた。 「ありがとう」 満足げに笑みを浮かべユキからビールを受け取ると私は迷わず空け、冷えたビールで喉を潤す。 すごく気分が良かった。 程よくフワフワした感覚と、程よい身体の火照りが私の中に潜む熱い衝動を駆り立てる。 「──ユキ……」 ビールをローテーブルに置くと、スルリと腕を伸ばしユキに触れると誘うように見つめる。 本来は恥ずかしくて自ら求めることなんて絶対にしないし、またアルコールの力を借りるのは不本意だが、仕方ない。 実際、”アルコールの力を借りる”というより”アルコールの力を借りているフリ”をしていると言った方が正しい。 そんな私にユキは微かに口角を上げ、不敵な笑みを洩らす。 多分、ユキも分かっている──私がさほど酔ってはいないということを…… 「どうした?眠いのか?」 分かっているくせに…… 気づいているくせに…… 意地悪なユキはわざと私を焦らし、そして言わせようとする。 .
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

824人が本棚に入れています
本棚に追加