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「仕方ないな。でもコレで終わりだからな」
粘る私に根負けしたという感じで、ユキは渋々重い腰を上げ、冷蔵庫からビール取ってきてくれた。
「ありがとう」
満足げに笑みを浮かべユキからビールを受け取ると私は迷わず空け、冷えたビールで喉を潤す。
すごく気分が良かった。
程よくフワフワした感覚と、程よい身体の火照りが私の中に潜む熱い衝動を駆り立てる。
「──ユキ……」
ビールをローテーブルに置くと、スルリと腕を伸ばしユキに触れると誘うように見つめる。
本来は恥ずかしくて自ら求めることなんて絶対にしないし、またアルコールの力を借りるのは不本意だが、仕方ない。
実際、”アルコールの力を借りる”というより”アルコールの力を借りているフリ”をしていると言った方が正しい。
そんな私にユキは微かに口角を上げ、不敵な笑みを洩らす。
多分、ユキも分かっている──私がさほど酔ってはいないということを……
「どうした?眠いのか?」
分かっているくせに……
気づいているくせに……
意地悪なユキはわざと私を焦らし、そして言わせようとする。
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