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行き違い #2
「最悪、最悪、最悪!!」
「咲穂さん、落ち着いてくださいよ」
あまりの恥ずかしさから給湯室に逃げ込み毒づく私を志帆が呆れ気味に宥める。
「ごめん。すぐ戻るから、ちょっと一人にしてもらっていい?」
冷静さを取り戻そうと思うが、さすがに今すぐというのは難しく志帆に先に戻ってくれるよう頼む。
「――はい、分かりました」
私の様子を気にする素振りを見せ、躊躇いがちに答えると志帆は素直に出て行ってくれた。
それを確認すると私は頭を抱え、深いため息とともに力なくその場に座り込んだ。
――何をしているんだろう……
自分の不甲斐なさに呆れるしかなく、自己嫌悪に陥ってしまった。
冷静に考えれば悟がそんなことを言うはずがないし、何より言う必要すらないのだから……
「悪い、意地悪がすぎたな」
不意に飛び込んできた声に顔を上げると、申し訳なさそうに眉を潜める悟。
「本当、最悪……」
私をからかう癖があるのは昔からだが、さすがに行き過ぎだった。
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