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いつもならタイミングよく話を振ってくれる神崎さんも今日に限って何も言ってくれない。
重い沈黙に耐え切れず、爪を弄り何とか間をもたせようと試みていると
「サキちゃん、こちら優子ちゃんって言って最近良く来てくれる常連さん。優子ちゃん、こちらサキちゃんって言って優子ちゃん同様常連さん」
私の前にグラスが置かれる音がしたかと思うと急に私たちを紹介しだした。
あまりに突然の事に戸惑いながらも会釈すると彼女も私と同じで戸惑い気味に会釈を返してくれた。
「せっかくだから三人で呑もう」
ほんの少し店の空気が軽くなったのを感じていると急に神崎さんがテンション高めに声を上げる。
そして自分のグラスに酒を注ぎ「乾杯」と私たちにグラスに軽く当てる。
私たちも神崎さんの勢いに押され、ぎこちなく互いのグラスを軽く当てた。
ちょっと寂しさを紛らわしに来ただけなのに、なんか変な流れになってきたな……
そう思いながらグラスに注がれているカクテルを一口飲んだ。
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