889人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の事よりも……
さっきの夕食でのことを思い出す。
「それより咲穂、悪かったな」
咲穂の後頭部に手を回し、ソット引き寄せるように抱きしめ謝りの言葉を口にする。
「え?何が?」
俺の腕の中で意味が解らないと言った様子で咲穂が戸惑いの色を見せる。
「だってさっき、お義姉さんが……」
「あ、気にしないで。言われても仕方ない事だから……」
俺の言葉を途中で遮り、軽く笑い流す咲穂。
パッと見、平気そうな感じもしたが「ごめんね」と小さな声で謝る咲穂に、やっぱり気にしているのだと思った。
「別に咲穂が謝ることじゃないだろ。これは二人で決めたことなんだから」
「うん、でも……」
咲穂は口ごもりながら俺の服をギュッと掴んできた。
今、咲穂が何を思っているかなんてことくらい俺には容易に分かった。
.
最初のコメントを投稿しよう!