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事の発端は夕食の席のお義姉さんの一言だった。
「そう言えば咲穂さんってまだ働いてるの?」
「――はい……」
突然、話を振られ戸惑居ながら答える咲穂。
――嫌な予感がした……
「由貴、恥ずかしくないのか?仮にも各務グループの息子だろ?世間の目を考えろ」
相変わらず親父に似た頭の固い兄貴が冷ややかな目で俺を見てきた。
「別にいいじゃないの。最近では共働きなんて普通なんでしょ?」
兄貴を宥めながら母親がやんわりとフォローに入ってくれた。
でも、それも何の意味もなく
「そうかもしれませんけど、働いてたら何かと忙しでしょ?そしたらねー……」
意味深に咲穂を見ながら言ったかと思うと、ソッと自分のお腹に手を置きだした。
瞬間、部屋の空気がガラリと変わる。
「え!?もしかして……」
「はい。もうすぐ3ヶ月に入るそうです」
どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべ答えるお義姉さんとそれに喜びを隠せないといった様子の母親。
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