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「最近また少し忙しくなったの?」
私の心配より自分の身体の心配をして欲しい。
ここ数日、急にユキの帰りが遅くなっていた。
「ん、ちょっとな。新しい仕事を任されて」
ちょっと渋い顔を見せビールを飲みつつ、冷蔵庫から出したおかずを摘まむ。
どうやら思っていた以上に厄介な仕事を任されたみたいだった。
疲れからか、あまり箸が進まないユキに「ご飯は?」と訊いてみたが軽く首を横に振られてしまった。
「あんまり無理しないでね。あ、お風呂沸かしてあるから」
気の利いたセリフを言えたらいいのに、ありきたりな言葉しか言えない自分が情けない。
「ああ、後で入る。少しだけ仕事するから先に寝てて……。おやすみ」
席を立ち私の頭に軽く手を置くと、それだけ言って寝室の隣の部屋へと消えていってしまった。
テーブルの上には空になったビールと殆ど手つかずにのままのおかずが残されていた。
「もう少し食べてよ……」
心配からか込み上げてきた悲しみを堪えながら私は残されたおかずを片づけた。
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