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日中の疲れを癒すように、ゆっくり湯船に浸かる。
ユキに疲れをとってもらおうと今日は柚子湯に、自分が入ってしまっている。
湯船に浮かぶ柚子を手のひらで遊びながら私は身体を深く湯に沈めた。
眠い……
もの凄く眠い……
一度は覚めた眠気が湯船の温かさからか、また眠気が襲ってきた。
眠っちゃ駄目だって分かっているのに逆らうことができない。
そんな時に蘇るのはユキとの初めて日のこと。
只でさえ衝撃的な朝だったのに、それに追い打ちをかけるような出来事。
夢であってほしいと死ぬほど祈ってしまったのは、もう遠い日の懐かしい記憶だ。
とはいえ、もう二度と味わいたくない―――あの屈辱。
私は睡魔に負けまいと勢いよく湯船から出てた。
濡れた髪をタオルで拭きながら寝室へと足を踏み入れるが、やっぱり部屋には真っ暗でユキの姿はなかった。
コーヒーでも入れて持っていこうかとも思ったが、夕食も殆ど手を付けていない空きっ腹の胃にコーヒーはあまりよくないと思い留まった。
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