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―――今日はちゃんとベッドの中で寝ている……
咲穂の寝姿にホッと胸を撫で下ろす。
気持ち良さそうに寝息を立てる咲穂の傍らに腰をおろし、顔にかかる髪をソッとよけてやる。
一瞬、触れてしまった指にくすぐったそうに顔をしかめたが、すぐにまた規則正しい呼吸音が聞こえてきた。
咲穂の寝顔を見ているだけで、さっきまでの圧し掛かるような疲れが吹っ飛んだ気がした。
「もうひと頑張りしてくるか」
よいしょ、と勢いをつけて立ち上がり隣の部屋の仕事部屋へと移動した。
――…
―…
部屋に籠って30分ほど経ったくらいだろうか。
静まり返った部屋にかすかな物音が聞こえた気がした。
反射的に振り返りドアの方を見るのと同時に小さくノックする音と共に「ユキ、帰ったの?」という咲穂の声が聞こえてきた。
「ああ、少し前にな」
そう答えるとゆっくりとドアが開き咲穂がひょっこりと顔を覗かせてきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
明らかに眠そうな顔で嬉しそうに笑みを漏らした。
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