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リビングに入ると当たり前だが父親が居て、ソファーに深く腰を下ろしていた。
――相変わらず居るだけで威圧感を感じさせる人だ。
不意に目が合う。
軽く頭を下げ挨拶をするが、俺の事をチラリと目の端に捉えた程度で、すぐに目を逸らされてしまった。
今さらだけど俺の事には興味がないみたいだな……
ショックはないが、やっぱりいい気はしないものだ。
「ユキ」
咲穂に呼ばれ我に返り、目の前に光景に驚かされた。
父親の姿ばかりに気をとられ、その向かいに咲穂が座っていたことに気づかなかったのだ。
「ユキ、どうしたの?」
咲穂ときたら父親を前にしても臆するどころか、その場に馴染んでいるようにも思えた。
さっきまであんなに緊張で震えていたくせに……
咲穂のおかげでほんの少し気持ちが軽くなっていった。
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