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明らかに重い空気が漂っているのに全く気づかない咲穂と母親。
俺たちを気にすることなく暫し談笑を楽しんでいた。
――ある意味、最強かも……。
そのあと兄貴夫婦も交えての夕食会。
食事の合間に飛び交うのは勿論、仕事の話。
只でさえ重い空気が余計に重くなってせっかくの料理も喉を通らない。
「由貴、飲まないの?」
最初に注がれたまま全く減っていないグラスに母親が気づく。
「ああ、帰り運転しなきゃいけないから。水を貰えないかな?」
「せっかくみんな集まってるのに付き合い悪いわよ、飲みなさいよ」
気づくといつもはあまり飲まない母親までワインに手を出していた。
本当は付き合うべきなんだろう……。
でも咲穂は運転できないし、面倒だけどタクシーで帰って明日車を取りに来ようか。
1人で思い悩んでいると
「帰りの心配してるなら泊まっていけばいいじゃない。ね、そうしなさいよ」
母親が突拍子もない事を言い出し、一人納得しながら俺のグラスにワインを注ぎだした。
嬉しそうな母親の姿に俺は渋々、そのワインを飲むしかなかった。
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