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「何よ、その意味深な笑いは……」
容子相手だと上手く誤魔化すことなんて無理で、疑いの眼差しを向けられてしまった。
「意味深って……。別にそんなつもりないわよ」
相談のってもらおうと呼んだのに、つい自ら話しを遠退かせてしまった。
「本当?」
それでも尚、疑い続ける容子に私は「お腹すいたし、とりあえず何か頼もう」と話を逸らした。
それには容子も強く同意。
お腹が空いているのと初めての店だったのとで、つい色々と頼み過ぎてしまった。
「あ、お刺身美味しい」
実家に居た頃は差ほど好んで食べていなかったのに、最近妙に食べたくなるのは歳のせいだろうか。
どうも和食って誤魔化しがきかない気がして私にはハードルが高すぎて、なかなかレパートリーに入れられず避けていた。
でも最近、帰りの遅いユキには和食のように胃に優しいものの方が良いような気がしてきていた。
―――今度、お母さんに習って来よう……
なんて本題の事も忘れ、ついつい真剣に食べに走ってしまっていた。
「で、相談したいことってない?咲穂がそうやって誤魔化して先延ばしにしようって時って相当思い悩んでいる時だよね」
幾分かお腹が満たされた容子がなかなか話を切り出さない私に痺れを切らし、向こうから振ってきた。
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