気配

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「俺は少し仕事をしなきゃいけないから、ゆっくり寝てろ」 不服そうに、そして残念そうに俺を見上げる咲穂の頭を撫で宥める。 仕事、と言われたら咲穂が何も言えなくなるっことを分かっているくせに―――卑怯な俺。 「分かった。おやすみなさい……」 案の定、咲穂はすんなりと承諾しベッドの中に潜り込んでいった。 「おやすみ」 もう一度、咲穂の頭を撫でると俺はゆっくりと立ち上がり寝室を後にした。 そしてリビングに置きっぱなしにしてあったビールと取ると仕事部屋に入った。 電気を点け、椅子に深く腰を下ろす。 本当は仕事なんて持ち帰ってなかった。 でも冷静さを失っているように見えた咲穂を抱くことなんてできなかった。 ―――余計に咲穂の事を傷つけてしまうような気がしたから……。 俺は自身の熱を冷ますために仕事部屋で一晩を過ごした。 .
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