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兆し #2
※
「今日はかなりご機嫌斜めだな」
雑にネクタイを緩め上着を脱ぐ俺に微かに笑いながら目の前にコースターとつまみのナッツを置く。
「まーな。急に兄貴に呼び出されて行ってみたら席が設けられててね」
「席?」
「ああ、顔見せみたいなもんだろ。行ってみたら親父まで居て、一番の得意先の重役様との堅苦しい会食」
思い出しただけドッと圧し掛かるような疲れを覚える。
「一杯食わされたんだ」
ため息とともに項垂れる俺に他人事とばかりに楽しそうに鼻で笑いだす。
―――はっきり言って面白くない。
「いつもの濃い目で!」
そんな神崎を睨みつけながら注文を入れる。
「かしこまりました」
やたら丁寧に頭を下げてみせるが、その声には明らかに笑いが含まれているのが分かった。
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