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だが、それを見てもフィルドが詠唱を中止することはない。そのかわり、笑みを形作る。
その瞬間、女性徒に異変が生じる。
「なっ」
バシャーン。水が弾け飛ぶ音とともに、女性徒が持ち上げていた腕が、勢いよく下がる。
「なんなのよ、これ。急に、水霊が重く」
本当にそのようで、なんとか重たそうに腕を持ち上げるが、時間切れ。詠唱が完成したのだ。
「グラビティーフォール」
フィルドが翳す手から、半透明の黒い球体が放たれる。
その魔法が何なのか知っているのか、その場から大きく飛びのく女性徒。
その判断は正しく、今までいた場所に到達した球体は半径五メートル程の重力場が発生し、リングを圧し潰す。しかも、直ぐには消えない。
「とっさに、身体強化を全力で施し飛び退いたのはいいけど。尖羅の能力を引きずっては、速度に難があるよ」
いつの間にか後ろに周りこんでいたのか、尖羅で女性徒の足を払うと同時に腹部を石附で打ち、今だに消えていない魔法へと弾き飛ばす。
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