714人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
エアコンのリモコンを持って白い息を吐きながらしばらく考える。
今日は今年一番の冷え込みらしい。
「こた…つけんの?」
空がベッドの中から聞いてくる。
こたとは小太郎という名前のオレに空がつけた愛称だ。
犬っぽいからやめろって言ってるんだが、こいつは小太郎は長いと言ってこたと呼ぶ。
「つけねえよ。」
リモコンを置く。やっぱ目的の為、節約は大事だ。
たたっと部屋に駆け込んで、赤いチェックのマフラーを外して、コートを脱ぐ。
制服を手早くハンガーにかけて冷え切ったスエットの上下を着ると、ぶるぶるっと震える。
心臓まで凍るような震えに耐えながらリビングに戻ると、空が布団の端を持ち上げた。
オレはそこに背中を向けて滑り込むと空の体温にため息をついた。
「冷た。」
言いながら暖めるように空がオレの背中を抱きしめる。
空はでっかいから、160そこそこしかないオレはすっぽり腕の中に納まってしまう。空は体温が高くて、いつも温かい。
男に抱きしめられてあったまるってのもどうかと思うけど、それより何より、オレには……焼肉が大事なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!