はじまりはじまり

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エアコンのリモコンを持って白い息を吐きながらしばらく考える。 今日は今年一番の冷え込みらしい。 「こた…つけんの?」 空がベッドの中から聞いてくる。 こたとは小太郎という名前のオレに空がつけた愛称だ。 犬っぽいからやめろって言ってるんだが、こいつは小太郎は長いと言ってこたと呼ぶ。 「つけねえよ。」 リモコンを置く。やっぱ目的の為、節約は大事だ。 たたっと部屋に駆け込んで、赤いチェックのマフラーを外して、コートを脱ぐ。 制服を手早くハンガーにかけて冷え切ったスエットの上下を着ると、ぶるぶるっと震える。 心臓まで凍るような震えに耐えながらリビングに戻ると、空が布団の端を持ち上げた。 オレはそこに背中を向けて滑り込むと空の体温にため息をついた。 「冷た。」 言いながら暖めるように空がオレの背中を抱きしめる。 空はでっかいから、160そこそこしかないオレはすっぽり腕の中に納まってしまう。空は体温が高くて、いつも温かい。 男に抱きしめられてあったまるってのもどうかと思うけど、それより何より、オレには……焼肉が大事なのだ。
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