第二話 ひょっとこ

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それから、そいつは私の背後に現れるようになったのよ。 急に視線が背中に当たるから、出た時はすぐに分かるわ。 でも、どうもそいつは私のことをじっと見るだけで、何かする気配 はなかったからほっといたのよ。 たまーにポリバケツの中から顔を覗かせてたりして、思わず一人で 吹き出しちゃったこともあったし。 名前でもつけてやろうかな、なんて考えてたつい一週間前よ。 講義が早めに終わって家に帰ったら、家の前に消防車。 家の窓を見ると、煙がモウモウ! 顔が真っ青になったわ。 ひょっとしたら……と思って周りを見たら、いたわ、電柱の陰に! あいつ、私をしばらくじっと見てたけど、急に「アバヨッ」って 感じで手を振って、走って逃げやがったのよ! 待ちやがれ!って追いかけたかったんだけど、ヒールだったから無 理だったわ。 ちぇっ。
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