第三話 青空を舞うもの

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私は空を眺めるのが好きだった。 特に青空が好きだった。 休日、河原の土手に寝転がって、まっ青な空を見上げたりなんかする と、一気に気持ちがよくなる。 身体が空と溶け合い、自分もその一部となって漂っているかのような 気になれたからだ。 高いところから、双眼鏡で辺りを見回すのも好きだった。 毎週土曜日の昼、近所にある記念公園の展望台に通うのが日課。 スタッフにもすっかり顔を覚えられていた。 備え付けの望遠鏡なんて使わなかった。 お金がかかるし、制限時間もあるし、何より私の持っている双眼鏡の 方がずっと精度がよかった。 特に意味はないし、いつも見慣れた景色を繰り返し見るだけだが、そ れがまたよいのだ。
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