第一話 唸り声

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私は逃げるように自分の部屋へと戻り、頭から毛布と布団を被り、 耳をふさいだ。 だが、声は止まらない。 「やめろ! やめろ!」 必死で叫んだ時、扉が開く音がした。 私は大人気ない叫び声を上げた。 「一体なにしてんの、さっきから」 顔を出すと、母親が訝しげな表情を浮かべ立っていた。 話しても信じてもらえそうにはなかったので、寝惚けていたと 誤魔化した。 変な男が外で大声を出していなかったか、 さり気なく聞いてみたが、全然知らないと言う。 大学へ入学するまでこの実家に住んでいたのだが、 妙なことに遭遇したのは、後にも先にもこの一度だけであった。                      (第一話 完)
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