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私は逃げるように自分の部屋へと戻り、頭から毛布と布団を被り、
耳をふさいだ。
だが、声は止まらない。
「やめろ! やめろ!」
必死で叫んだ時、扉が開く音がした。
私は大人気ない叫び声を上げた。
「一体なにしてんの、さっきから」
顔を出すと、母親が訝しげな表情を浮かべ立っていた。
話しても信じてもらえそうにはなかったので、寝惚けていたと
誤魔化した。
変な男が外で大声を出していなかったか、
さり気なく聞いてみたが、全然知らないと言う。
大学へ入学するまでこの実家に住んでいたのだが、
妙なことに遭遇したのは、後にも先にもこの一度だけであった。
(第一話 完)
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