2156人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「あ!聖、メシ食ってる
場合じゃねーわ。
院長の検査に行かないと」
突然背中から聞こえた
松田先生の声と、
どこか動揺したような
彼の声に思わず
ピクリと眉が揺れてしまった。
「じゃ飯野さん、ごゆっくり。
おい聖、急がないとマジでヤバイ」
まるで強制的に連行するように
彼の腕を掴み食堂を出て行った
松田先生の行動に違和感を
感じていても、ただ
そこから去って行く
聖の背中を見つめる事しか
出来なかった。
「紗枝」
たった一言私の名を呼んで
孝之は穏やかな瞳で
小さく頷く。
…わかってる。
今は、亜希ちゃんと一緒。
心の中にずっといる聖に
蓋をして、このまやかしの家庭を
大切にしてくれって孝之は
言いたかったんだと思う。
最初のコメントを投稿しよう!