16人が本棚に入れています
本棚に追加
時刻は午前5時半前、陽も登り始め閉められたカーテン越しから暖かな日射しが僅(わず)かに入り込んでいる。
そんな一室の端でベッドの上で丸くなり、この家の主は穏やかな寝息を立てていた。
言葉になっていない寝言を言い身動ぎをする。
それに合わせて、灰を被ったかのようにくすんだ金の髪がさらりと揺れた。
穏やかに気持ち良さげに寝ている男に危険が迫っていた。
ギィ、と木製の真新しいドアが小さく鳴くように軋みゆっくり開かれる。
その開かれたドアから、ひょこっ、と女の子が顔を出し辺りを伺う小動物のようにきょろきょろと部屋を確認する。
少年が未だに寝ているのを確認して、ぱっちりとしていて愛らしい目鼻立ちをした女の子はその可愛らしい顔に似合わない獰猛な笑みを浮かべる。
少年を起こしてしまわないようにゆっくり、ゆっくりと足音を忍ばせて歩く。
女の子自身、ぶち抜き足ぶっ射し足穴開発、と言いながら忍んでいる。
一歩、また一歩と踏み出す度に女の子の燃えるように赤いツインテールがぴょこぴょこ揺れる。
決して起こさないように気配を消して歩いていた女の子が、ついにベッドの後ろに到着した。
自分の目的の達成をひしと感じた彼女は更に笑みを強くする。
思わず、「にへ、にへへへへへ」、と顔に似合わないいやらしい笑いが漏れる。
それほどまでに彼女は内心歓喜していた。
だがしかし、ここで気を緩めてはいけない。
ここまで来たのだ、バレるなどというミスを犯してしまっては元も子もない。
そろりそろりと布団を捲り上げ、ぬるりと自分の体を滑り込ませようとする。
ガチーーン!
彼女が布団に潜り込むことは無かった。
如何にも痛々しい音を立てて純銀製のトレイが頭にめり込んだからだ。
女の子にやるレベルではない衝撃を受け、苦悶の表情を浮かべながら唸る。
誰がやったのかは分かりきっていたが、自分を殴った人物を見るために振り向く。
「何やってやがんだ、手伝え」
「で、ですよねー」
肩の辺りで適当に切られた絹のようにさらさらとした軟かな銀の髪を揺らしながら彼女の同僚が仁王立ちしていた。
「ぅ...うーん...あれ、二人共どうしたの?
って、何でルミア下着なの?」
「...ちょっと迸(ほとばし)る熱いリビドーを抑えきれなくなってしまいまして」
「良いから服着ろ」
銀食器の音が春の朝に鳴り響いた。
最初のコメントを投稿しよう!