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家の近所に、小さな空き地がある。
小さすぎて、公園とは絶対に呼べない。しかも道路沿いで縦に長く、キャッチボールが出来たら御の字というところだ。
それも、その真ん中辺りに置かれた木箱が無ければの話だった。
その木箱がいつからそこにあるのかは分からない。気付けば誰が置いたか、そこにあったのだ。
打ち捨てられたかのような、悲しい木箱。蓋は無く、横を向いている為、箱としても使えない。
でも誰かを、何かを待っているかのように、その口を開けて泣いていた。
それを見て、私はふと昔を思い出した。
その空き地──その隣に建つ家は新しくなり、少し様相は違っているが、その空き地だけは変わらずそこにある──の、ちょうどその木箱がある辺りに、猫の遺骸があったのだ。
私が子供の頃の話だ。
遠い記憶。見間違いだったのかも知れない。
でも彼女は、ミイラのような風貌のまま身体を半身起こし、何かを待っていた。
確かに死んでいた。
確かにミイラのようにしか見えなかった。
でも確かに身体を半身起こし、そこに居たのだ。
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