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カタカタと揺り籠のように二人が乗った馬車は揺れる。
柔らかな月明かりに照らされた景色は馬の足に合わせてゆっくりと流れていった。
セラは馬車の窓からその景色をぼぅと眺めている。
対面に座る清穆は、いつものように本を読んでいた。
今までの殺伐とした光景が嘘のように穏やかな空間だった。
セラはふいに窓の景色から視線を戻すと、きゅと帽子をかぶり直した。
「癖、なんですか?」
「!」
本のページを捲りながら、唐突に清穆が口を開く。
「貴女は顔を隠すように帽子をかぶり直す時がありますね。今のように。癖なんですか?」
「……癖?……自分では自覚無かったんスけど、言われてみれば……癖、かもしれないッスね。よく見てますね、清穆さん。」
「決まってそれをやる時が、貴女が辛そうな顔をしてる時でしたから。今も何を考えていたんですか?」
「……そんなに分かり易い顔してるんスか、自分……。」
「分かり易いからこそ無意識に隠そうとしてるのかもしれませんね。」
「……。」
セラは暫し口を閉ざした。
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