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そのせいで二人の間にあった音は、馬車を引く馬の蹄と、車輪が回る音だけになった。
セラは傍らに立て掛けたライフルに指先を走らせる。
そしてやっと彼女は口を開いた。
「清穆さん。こいつがどういう銃か知っていますか?」
「すみません。銃には詳しくなくて……。」
清穆の申し訳なさそうな返答に、セラはふっと微笑を浮かべた。
「バトルライフル『スプリングフィールドM14』。銃身が長く、手入れが大変で更に7.62mm×51弾をフルオート(一度引き金を引くと弾が無くなるまで自動で打ち続ける機能)で射撃した場合の反動のコントロールが難しい癖の強い奴ッスけど、その射程距離と7.62mm弾の貫通力は凄まじいものがあります。」
可愛い奴ですよ。そう呟いてセラは再び銃身を撫でる。
「ライフルは主に二種類に分かれます。『アサルトライフル』、『バトルライフル』。アサルトは接近戦用。軽くて小回りが効きますが威力はそれほどでもないッス。こいつのようなバトルは……──」
途中で言葉を切るとセラは脇に立て掛けたライフルを掴み、銃口を清穆に向けて構えると、ばんっと小さく口にして撃つ真似をした。
「──威力は強力ッスけど重くて機動性がありません。主に狙撃用ッス。」
にこりと笑って彼女はライフルを元の場所に置く。
「自分は状況に合わせて使い分けられるように様々なライフルを持ってるッスけど、『アサルトライフル』だけは殆ど持ってないッス。何故だと思います?」
「それは貴女の能力によるものでしょう?威力の強い銃に貴女の透視能力が加われば鬼に金棒ですからね。」
「んー……それもありますけど、本当は違います。それ、『バトルライフル』を持つ理由にはなっても『アサルトライフル』を“持たない”理由にはなってないッスよね?」
「あ。」
彼にしては珍しい、指摘されて初めて気付いたかのような反応に、セラは再びにこりと笑った。
「正解は、自分が“臆病者”だからッス。」
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