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セラは問いかけた。
「ねぇ、清穆さん。」
「何ですか?」
「これを聞いたついでに約束してくれませんか?」
「約束?」
「自分は、最後はどちらを選ぶのか。それを見届けてくれると。」
それを聞いた清穆は微かに眉間に皺を寄せる。
「……最後、とは?」
「最後は最後ッス。」
セラは清穆の問いをニコッと笑ってはぐらかした。
「……。」
彼は暫く黙りこくるが、やがて思考がまとまったのか口を開いた。
「セラさん。それは約束できません。」
「何故?」
「最後など来させないからです。役職がどうこう以前に、俺達は全員サゼルメルクの兵士。そして兵士は王のものです。王は……アルシェロ様は、とてもお優しい方です。だから俺達の事を大事に思って下さっている。
アルシェロ様は貴女の言う最後など望まれないでしょう。王の望みならば王のものである兵士はそれを全うしなければならない。だから俺達は出来うる限り自分の命も、仲間の命も守ります。最後など来させない。だからその約束は守れません。」
「……。」
彼女はとっさに言い返す言葉が見付からなかった。
「セラさん。命が惜しいと思って良いんですよ。人ならば当たり前の感情です。貴女にとって譲れないもの、守りたいもの、それぞれに折り合いをつけてゆけば良いんです。それでどのような結果になったとしても、誰も貴女を攻めたりしません。自分を取り繕うのはやめましょう?貴女は少佐で、兵士である前に一人の人間なんだから。」
呆然と清穆を見つめるセラに向けて、彼はいつもと同じようににこりと穏やかに微笑んだ。
「悩んで、悩んで、本当の自分を見つけましょう?時間はかかるかもしれませんけど、息詰まったらいつでも愚痴は聞いてあげますから。」
「……。」
セラはキュッと唇を引き結ぶと、まるで泣き顔を見られまいとするかのように抱えた膝の中に顔を埋めた。
「……反則ッスよ、それ。泣きたくなっちゃうじゃないッスか。」
「泣いたっていいじゃないですか。」
「ヤダ。絶対にヤダ。」
そう言うとセラは顔を埋めたまま沈黙した。
清穆は苦笑を浮かべて小さくため息をつくと、止めていたページをめくる手を再び動かした。
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