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「……そうですか。そういうことでしたら今回俺は引き下がることにしましょう。」
「助かります。」
そう言うとセラは清穆の脇をするりと抜け、先程彼が双眼鏡で覗いていた窓の枠に銃身を乗せた。
引き金に指を掛け、スコープを覗く彼女の顔に感情は伺えない。
普段は喜怒哀楽が激しい彼女だというのに、銃を持った途端に無機質になる。
必要最低限喋らない。
その指先に感情など皆無。
ただ淡々と作業をこなすだけの機械に成り下がる。
セラはスコープを通して瞳に映った、炎の中高笑いする男に照準を合わせた。
発泡音。
空を切る弾丸。
湿っぽい音と共に飛び散る血と脳漿。
スコープの中であの下卑た男が途端に力を無くして馬から振り落とされるのと、ライフルから排出された薬莢がカランと床に落ちるのが同時だった。
「お見事。」
清穆は囁くように呟く。
しかしセラはそれに反応を返さず、再び引き金を引いた。
いきなり親玉を失った事にパニックになった盗賊団の面を容赦なく次々と撃ち抜いてゆく。
逃げ惑う者は銃身をずらしてその背中を撃ち抜く。
どんどん死体の山が築かれていった。
しかしパニックにはなっても敵も愚かではない。
案の定、狙撃されていると気付いた者から建物の中に逃げ込み、やがて外には誰も見えなくなった。
恐らく既に方角もバレている。
生き残った奴等は隠れながら、殺された仲間の復讐に燃え、どうやって自分達を始末しようか考えている事だろう。
セラは立て続けに発射して発熱した銃身をすっと下ろした。
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