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「清穆さん。」
「何でしょう?」
不意に声をかけられ、清穆は首を傾げる。
「弾を変えます。そこの箱取って下さい。」
見ると彼のすぐ傍に他の弾が入っていた箱より一際大きな木箱があった。
清穆がそれを渡すと、セラは中身を確認して弾倉に詰める。
その弾を見た彼は微かに目を見開いた。
「その弾……随分大きいですね。人の指ほどある。」
「7.62x51mm 弾ッス。威力、貫通力、共にさっきの弾とは比べ物になりません。」
セラは再び銃身を窓枠に乗せ、射撃の構えを作る。
しかし1点だけ先程とは違ったところがあった。
セラのエメラルドグリーンの瞳が血のように真っ赤に染まっている。
「狙撃に対して建物の中に隠れる対策は正しい判断ッス。」
敵の姿など見えないはずだというのに、彼女は先程と同じように、なんの躊躇もなく淡々と
引き金を引いた。
銃弾が発射された音がエコーを伴って虚空に響く。
そして建物に潜んでいた一人の賊が、壁を貫通した弾に胸部を撃たれ吐血しながら倒れた。
その様を赤い瞳に克明に映して、セラは呟く。
「けど自分にはそれも無意味ッスよ。」
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