年末の一風景

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「……でもまぁ、れっきとした調理係なら仕方ないか……。」 華紗祢は既に疲れたようにため息を着くと、残りの女子二人に視線を向けた。 「紫羽、花音。頼りにしてるよ。」 「は、はい!華紗祢さんがそう言うなら……頑張ります!!」 「そう言われると緊張しますけど一生懸命やりますね!」 そう言って戸惑いがちに微笑む彼女達。 一人は二番組隊士“紫羽”。赤に近い桃色の髪を一つにまとめ、すみれ色の眼差しが可愛らしい少女だ。 もう一人は特殊伍番組隊士“花音”。柔らかな色の茶髪を二つに結び、華やかな髪留めを付けた姿は年頃の娘らしさを感じさせる。 「とりあえず、蒼!!アンタせめてその袖の長い着物どうにかしやがれ!!たすき貸すから!!」 華紗祢はそう告げると蒼に向けてたすきの束をほおり投げた。 「はいはい。」 彼は素直に受け取って袖をまくり上げる。 「それから小鴉丸!!アンタ調理場に銃持ってくるなんてどうゆう了見だ!!置いてこい!!!!」 「えーでもよぉ、これ俺のお気に入りであんまり離したくないんだけど。」 「そう……別に火を使ってる時に引火して爆死しても」「すんません!今すぐ置いてきまっす!!!!」 何気ない顔で恐ろしい発言をした華紗祢に若干顔を青くした小鴉丸は駆け足で調理場を飛び出した。 その背中を見送り、気を取直して華紗祢は残りの三人と向き合う。 「一応アタシは一通りの料理は出来るからこの場を取り仕切るように頼まれたんだけど……アンタ等は料理出来る?」 それに真っ先に答えたのは蒼。 「俺は全く出来ねぇ。」 「だろうな。」 きりりと言い切った蒼の言葉をたった四文字でバッサリと切り捨て、華紗祢は紫羽と花音の返事を視線で催促した。 「えっと……あんまり自信はないけど、華紗祢さんが指示してくれるなら大丈夫だと思います。」 花音はにっこり笑って答える。しかし紫羽は気まずそうに目を伏せて答えない。 彼女のその様子で華紗祢は勘づいた。 「あー……もしかして紫羽。あんた……」 「料理……苦手なんです……。」 か細い声で紡がれた言葉に、彼女は思わず眉間を押さえる。
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