年末の一風景

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「そ、その……どうしても包丁を握ると切ったものが細くなり過ぎて練り物みたいに……。」 「ね、練り物……。」 「ごめんなさい……。駄目ですよね、こんなんじゃ……。」 「いや!誰にでも得手不得手はあるもんだし!気にしなくて大丈夫だから!!そう落ち込むなって!!」 どんどん落ち込んでしまう紫羽の様子を見て華紗祢は慌てて言った。 「とりあえず包丁を持たなければ良いんだ。紫羽はお吸い物の出汁作りを頼むよ。やり方は教えるから。それから出汁作りで慣れて余裕が出来たら黒豆の方も頼む。どっちも火加減が大事だ。火は良く見といて。」 「は、はい!分かりました。」 「そんじゃ、花音は数の子と田作りよろしくな。数の子は予め塩抜きしてあるから。大変だけど……手が足りなかったら呼べばいつでも駆け付けるから。分からない事もあったら言って。」 「はい!!頑張ります!!」 「そんで?俺は何すりゃいい訳?」 そこで蒼が気だるそうに華紗祢に訪ねる。そう言われると彼女は難しい顔で唸った。 「んー……それにはまず、あんた何が出来る?」 「俺、大根のかつら剥きができるぜ。」 「出来んのかよっ?!」 あまりにも予想外の蒼の特技に、華紗祢は目を丸くする。 「なんだよ、その顔は。俺だって特技があるんだよ。」 「い、いや、悪い……。あまりにも料理に近い特技なんでびっくりした……。そんじゃあんたは材料切る係でいいな?」 「おう、やれってんならやるぜ!」 「そんじゃあそこにお吸い物とか煮物の具の材料があるから、それぞれ食べやすい大きさに切ってくれ。常識の範囲内でやってくれればとやかくは言わないから。とにかく量があるから今から取りかかれよ。」 頼もしい台詞と共に袖をまくる蒼に、少し安心した華紗祢はその場を彼に任せる事にした。 「そんじゃ、あたしは別場所で年越しそば打ってるから。何かあったら呼べよ。」 「りょーかい。」
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