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土を踏みしめる音。切れる息。
彼は目の前に建つ門扉を見つめた。
そこに立掛けられた看板には【陰陽組】の文字。
彼は自ら握るチラシを見て、そこに書かれた組織の名と一致することを確認した。
「ここだ……。」
彼は意をけしてその門扉を叩いた。
*****
「局長。」
「あら、霧生じゃない。」
縁側にて茶を嗜む彼女は一人の青年に声をかけられて振り返った。
その表情に落ち着いた笑みを浮かべている彼女は【有馬悠】。女性ながらこの陰陽組を統べる局長である。
そして彼女に声をかけた彼は【霧生】。一番隊隊士に所属する、こちらも落ち着いた雰囲気の物事柔らかな青年だ。
「良かった。今日はいらしてたのですね。」
「私だっていつも散歩してる訳じゃないのよ?」
「それは分かってます。しかしもう少し頻度を下げられたらどうですか?」
「お小言は蓮だけで充分よ。」
彼女は悪戯っぽくクスクスと笑う。
「それで?どうかしたのかしら?」
「訪問者です。私が出迎えたので呼びに来ました。」
「そう。どんな御用かしら。」
「本人が取り乱していたので詳細は分かりませんが……おそらく入隊希望かと。」
「あぁそれで。」
「?」
何か納得いったように呟く彼女の様子に、首を傾げる彼。
そんな彼を指さして、彼女はまたクスリと笑った。
「服、乱れてるわよ。」
「!これは失礼しました。」
慌てて身だしなみを整える彼を見て彼女はますます愉快げに笑う。しかしすぐに表情を引き締めるとスクっと立ち上がった。
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