変暇竜の桶

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辰次の家は代々続く地酒のお店をやっています。 しかし、それほど繁盛しているわけでもなく、細々とした収入に親が遺してくれた田畑で裕福ではないが、幸せな生活を送っていて…それで十分だと本人は思っていました。 地酒がそれとなく人気があるのは、裏庭にある『変暇竜の桶(へんかりゅうのおけ)』と呼ばれる井戸のおかげでした。 この井戸は、辰次の先祖が作ったものでした。今でも涌き水がこんこんと出て、この水で作ったお米や野菜、特に地酒は最高峰の味と評判でした。 名前の由来は辰次の祖父でも知りませんでした。 ただ、造りがとても粗末なので井戸というより桶が定着していました。
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