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急いで機材の設置を進めるため、
カバーが掛かったままのアンプを、
楽屋通路脇に放置されている台車に乗せて移動する。
ステージの登り口まで台車で運び、電源コードのリールを
ステージ台に置いた後、ギターアンプを持ち上げる。
30キロ近くあるため、かなり重い。
歯を食いしばり、一歩一歩確かめながら
ステージ中央に設置された木の階段を登る。
アンプ一個壊せば、チケット100枚分が、パアになる。
ステージ中央でマイクを設置するリヒトの前を通過し、
ステージの左端に設置する。
ベースアンプと共鳴しあわないようにする目安となる
赤いテープよりも、5センチ程後ろに寄せる。
それが、今までライブをしてきて丁度良い塩梅であることは、
経験上覚えてきたことだ。
いつか、
この赤いシールの場所を貼り直したいと思いつつ
今日に至る。
プラグを差込み、電源の安全確認をしてから再び振り返る。
しゃがみ込み、マイクのコードをステージから
電源元までガムテープで床に固定している
”リヒト”に声をかけ、作業が終わったことを告げる。
「アンプ、置いといたぜ」
背中越しに手を軽く上げて、
「サンキュ。のぶちん」
と、愛想ない返事が返って来た。
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