【EINS】(アインス)

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呆れたように見つめる俺の視線に気づき、 あくびをする方向を変えて 再度、バカみたく欠伸を続ける”リヒト”に近づく。 猫科の動物のように吊上がる大きな眼が、 チラリと横目で俺が近づくのを、確認してから アクビをすることを一旦止めて、俯き, ガムテをまた千切り始める。 アッシュグレイの柔らかな髪がふわりと揺れる。 空調が”リヒト”の真上にあるのだろう。 絶え間なくゆるいウエーブがかかった髪を 靡かせている。 毛先の長いネオウルフカットであるせいで、 前髪が長く、風が吹く度に ゆらゆら揺れる調子だからか ひっきり無しに前髪を直していた。 すぐ際まで行くと、 ”リヒト”のお気に入りの香水の香りに包まれた。 いつも、 みずきから香る残り香を、唐突に思い出した。 彼女ともまた、 リヒトと同じ年月を、共に過ごしている...。
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