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「はい、楽譜。
王道ロックとは縁遠い”リヒト”の発声練習には
丁度いいだろ?」
ギターコードの殴り書きがされた楽譜を
”リヒト”の目前に突き出した。
「軽く歌ってみろよ」と、挑戦的に告げる。
「ふんっ。驚くなよ?」
剥き出しの闘争心を隠すことなく俺を睨(ね)めつけて、
ひったくる様にして楽譜を掴み、部屋の隅に置かれていた
スタンドマイクを中央まで引っ張ってくる。
すべての歌詞を暗記するかのように楽譜を
食い入るように見つめ、
なにやらブツブツと呟き始めた。
目を閉じたまま、天井を見上げる。
小柄な割に、なぜか大きく感じる・・・。
どんな世界でも通用しそうな、甘いマスク。
どこか俺たちとは違うオーラ・・・
むかつくほど、
スポットライトを浴びるのがよく似合う男だ。
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