JAM

3/6
前へ
/35ページ
次へ
「はい、楽譜。 王道ロックとは縁遠い”リヒト”の発声練習には 丁度いいだろ?」 ギターコードの殴り書きがされた楽譜を ”リヒト”の目前に突き出した。 「軽く歌ってみろよ」と、挑戦的に告げる。 「ふんっ。驚くなよ?」 剥き出しの闘争心を隠すことなく俺を睨(ね)めつけて、 ひったくる様にして楽譜を掴み、部屋の隅に置かれていた スタンドマイクを中央まで引っ張ってくる。 すべての歌詞を暗記するかのように楽譜を 食い入るように見つめ、 なにやらブツブツと呟き始めた。 目を閉じたまま、天井を見上げる。 小柄な割に、なぜか大きく感じる・・・。 どんな世界でも通用しそうな、甘いマスク。 どこか俺たちとは違うオーラ・・・ むかつくほど、 スポットライトを浴びるのがよく似合う男だ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加