150人が本棚に入れています
本棚に追加
嫉妬に似た感情が沸き起こっていることなどリヒトは露知らず。
黙々と楽譜と睨めっこをしていたが、
おもむろに、スタンドマイクの前に一歩近づき、
マイクのスイッチを入れて背中で俺たちを威圧する。
”さっさとやろうぜ”と言うリヒトの無言の挑発に乗ったのか、
トアが素早くアンプの電源をいれ,肩にベースギターを掛けて
ピックで弦を弾き、リズムを取り始める。
「次。俺だからな」と”クラウト”が俺を睨みながら
パイプ椅子に立てかけていたエレキを掴み、
”トア”と歩調を合わせ始めた。
俺も、リヒトを煽るように
背の低いスチールチェアに腰掛けて
ウッドスティックを取り、
ライドシンバルを打ち鳴らし始める。
俺たちの波長がシンクロし始め、
(同調)
音楽が融合してゆく。
残るは、最後のスパイスを振り掛けるだけだ。
最初のコメントを投稿しよう!