JAM

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突然、リヒトが トアと、クラウトに振り返る。 拳を、天に高らかと突き上げて 準備OKの合図を出した。 間髪入れず、 クラウトのギターが、勢いよく弾ける。 マイクに食らいつくように、リヒトが歌いだした。 思わず、スティックを、振り落としそうになる。 『なんだこいつ・・・・・・・ ・・・・・スゲエ・・・。』 思いがけない甘く柔らかな歌声に 驚愕したのは俺だけじゃなく、クラウトもだった。 「嘘だろ?」という文字が表情から読み取れる。 トアも、思いがけない収穫に、 思わず顔がニヤついているようだ。 楽譜を片手に、マイクにかじり付き歌い続ける”リヒト”は、 異星人じゃなく・・・神なのかもしれない・・・ ドラムを打つ足元が踊り始めた。 リヒトの足も、呼応するように地面を弾み始める。 曲調が変わり、 甘いだけの声色を抑えきれずに、軽くシャウトし、 激しく、 そして女を愛撫するかのように丁寧に歌い続ける。 鳥肌が立つっていうのはこういうことか・・・ 初めてのセッションだというのに 完璧な同調(シンクロ)をする”リヒト”に、 ・・・・・・そして、 ・・・・・・その声に、魅了されている・・・。
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