150人が本棚に入れています
本棚に追加
突然、リヒトが
トアと、クラウトに振り返る。
拳を、天に高らかと突き上げて
準備OKの合図を出した。
間髪入れず、
クラウトのギターが、勢いよく弾ける。
マイクに食らいつくように、リヒトが歌いだした。
思わず、スティックを、振り落としそうになる。
『なんだこいつ・・・・・・・
・・・・・スゲエ・・・。』
思いがけない甘く柔らかな歌声に
驚愕したのは俺だけじゃなく、クラウトもだった。
「嘘だろ?」という文字が表情から読み取れる。
トアも、思いがけない収穫に、
思わず顔がニヤついているようだ。
楽譜を片手に、マイクにかじり付き歌い続ける”リヒト”は、
異星人じゃなく・・・神なのかもしれない・・・
ドラムを打つ足元が踊り始めた。
リヒトの足も、呼応するように地面を弾み始める。
曲調が変わり、
甘いだけの声色を抑えきれずに、軽くシャウトし、
激しく、
そして女を愛撫するかのように丁寧に歌い続ける。
鳥肌が立つっていうのはこういうことか・・・
初めてのセッションだというのに
完璧な同調(シンクロ)をする”リヒト”に、
・・・・・・そして、
・・・・・・その声に、魅了されている・・・。
最初のコメントを投稿しよう!