The Dying Light

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「・・・・」ノブが、無言で俺から視線を逸らした。 頭を抱え込んで深いため息をつく。 ・・・殴ってくれよ・・・。 ・・・ノブ。 唇を震わせて拳を握り締めていたが、 瞳は、こうなることを大分前から解かっていたという、悠然とした表情を湛えて俺に振り返った。 先ほどのチケットを捨てた事に対しての 疑問が氷解したからなのか、 落ち着き払っている様子が、伝わってくる。 どうせ・・・・。 俺が抜けても他の奴を探せばいいぐらいにしか 思ってないだろう。 「みずきは・・・知ってるのか?」 思わず唸る。 本当にてめえは・・・・ みずき、みずきって・・・うっせえんだよ・・・ ムカつくほど涼しげな表情のノブが告げるのは、 最もコイツの口から聞きたくない人物の名前だった。 「デビューすることを? 言っただろ?事務所から固く口止めされてる・・ あいつには・・・、金をそのうち返すよ ノブが心配する必要なんかないしさ。 それに・・あいつの財布は俺が握ってるからな」 皮肉たっぷりに俺はいった。 いつだって、俺の話をしているのに、 コイツの心配はみずきの事ばかりだった。 まだノブは、 みずきと俺との間に起きた出来事を知らない。 強がりでも、 みずきの財布の中まで俺の手の内に在ると はっきり理解させる必要がある。 おせっかいな偽善者。 みずきを助けるヒーローに成りたくて堪らない 嘘つき野郎。 こいつにだけは・・・みずきを奪われたくない。
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