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だるそうにしていた対面側に座るNAOYAも、
バンド名を自分で決められなくて
膨れっ面のITSUKIでさえ、
OTOWA の言葉の重大さに、気がついたようだ。
慌ててカバンをひっくり返して書類に釘づけになる。
「俺たち・・同じ部屋で寝起きするのかよ??」」
最初に顔を上げたのは、
デスメイクから、キラキラ系ビジュアルメイクに変わった
ITSUKI (樹)だった。
顔には、殺人者さながらの憎悪が、滲み出ている。
下腹を揺らしながら、
俺たちのマネージャーが残念そうなため息を漏らす。
「はあ。お前たち・・一体何を聞いてたんだ?」
「聞いてねえし!!」
「そんな話初耳だぜ!!」
「だましただろ!!」
・・・・・・。
こんな時だけ意見が合う。
「いいや、最初に話したはずだ。
プロデビューが決まったら皆の団結力を高めるために、ひとつ屋根の下で生活を続けるって結成会の時にちゃあんと言ったはずだぞ?」
全員に聞こえるように、糸井は言った。
もしかして・・・、
夕日に向かって走る的な演説を繰り出した・・あれのこと?
「おっさんの説教地味た言葉の間に、そんな重要事項を混ぜ込んでいたら、俺たちが聞いているはずねえだろうが。」
皆を代表し、糸井マネージャーの説教を聞かないのは、当然だという主張をする ITSUKI が、
またも頬を膨らませる。
「それにさ、団結力ってなに?そんなの意味あんのかよ?」
体育会系とは思えない、ほねぎすの、NAOYA(直哉)が、
糸井の言葉に失笑する。
「お前らなあ。これからプロモ活動や、レコーディングと朝から晩まで一緒に行動することが多いんだ。
家に帰る時間なんか殆ど無いだろうし、移動時間も出来る限り短縮したい。
だから、デビューしてから暫くは、俺がみっちり管理することになる。
その為にも皆一緒が動きやすいんだよ」
「つまりは、俺たちをひとつのハコに入れておけば、監視も楽だって理由だろ?」
「・・・」
ずばりと聞くOTOWAに、糸井が口ごもる。
「・・事務所の方針だから。暫くの間だから・・ね。」
すぐさま下手に出た糸井。
・・・否定はしないんだな。
「まさか・・糸井マネージャーも一緒?」
恐る恐る質問した。
「げ!!!」
メンバー全員が、
反吐を吐いた後のような蒼白な表情に変わってゆく。
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