126人が本棚に入れています
本棚に追加
だが・・・俺たちは違う。
彼らとは違い、俺達は研究生として事務所に金など払った事は一度たりとも無い。
求められて、ここにやってきたのだ。
横槍を入れて、一筋の光である「メジャーデビュー」という場所を奪ったわけで、
今俺たちが、ごねている理由を、彼らが聞いたら呆れ返るだろう。
喉から手が出るほど欲しい。
何に変えても・・・。
このチャンス、手に入れたい。
それは俺も同じだ。
だからと言って、簡単にハイそうですかと折れるわけには行かない。
それは、俺たちの見せ掛けだけのプライドってやつが邪魔をするからだ。
だが・・・
それが無かったら、鍍金(メッキ)なんて簡単に剥がれ落ちてしまう。
「ムリッっすね。同じ家で人と過ごすなんて、嫌です」
最後まで面倒ITSUKIがむくれる。
常に誰かと一緒に行動するなんて、堪ったもんじゃない・・
それが、馬の合いそうに無い奴らなら特に・・だ。
ほかの奴らも同様に、そう感じているようだった。
糸井の同居計画に対して、拒否する姿勢を崩さないでいる。
そのため糸井は、俺たちに無駄とも言える説教を始めることにしたようだ。
「たった1年の辛抱だ、バンドが軌道に乗れば、好きな場所に住んでいい。
好きに出かけることもできる、だが1年最初の1年が肝心なんだ。
この1年で、お前たちの音楽人生全てが決まるといっても過言じゃない。
事務所を信じて付いて来てくれないか??」
おっさんが、悲痛な叫びを上げているのにも関わらず、
NAOTOがとどめを刺す。
「1年で芽が出なかったら、俺たち終わりだろ?
事務所から契約解除されて、それで終わりだ。」
誓約書通りの言葉を吐き捨てた。
事務所契約は1年ごと、売上制で年俸が決定する。
「GOTO/プロダクション」の売上基準値に届かなければ、再契約はされない。
1年後・・・。
受け皿の失った俺たちはこの業界から排除されるわけだ。
最初のコメントを投稿しよう!