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「1年の我慢か・・・」
ITSUKIが呟き、腕組みをして真剣な表情を見せる。
こいつらもデビューしたいのだ。
いくらカッコつけていたとしても、
デビューさせてくれる事務所の存在は捨て難い。
「せめて、週末まで入寮するの待てないのかよ?
こんな急じゃ、誰も準備なんかしてねえだろ?」
精一杯の強がりだったが、時間稼ぎしなくちゃならない。
みずきに、話さなくてはならない・・・
それに週末のみずきが準備したサプライズの
中身は知りたかった。
とにかく時間が欲しい。
がんじがらめの拘束があったとしても
ここで断ったとしたら、次に声がかかるのは何年先になるのか・・・
それとも、もう二度とチャンスなんて訪れなくなる。
みずきを驚かせることが出来なくなるのは残念だったが
みずきには事実を伝えて、1年後まで待ってもらう他ない。
きっとみずきなら大丈夫だ・・・
朝の密かな楽しみが奪われるのが、切なくて堪らなかったが
いつまでも、みずきに食わせて貰うわけにもいかない。
「構わないよ、じゃあ、月曜日にまた事務所に集まるってことでいいかな?」
誰も答えない。
返答のない静まり返った部屋で、また糸井が額の汗を拭った。
まだ誰も妥協したくないようだ。
「自宅はどうすればいいっすか?そのままにして
家賃とか掛かるんすけど・・」
「そのまま置いておいてもいいけど、維持費がかかるだろ?
ロッカーなら、無償提供するから、
そこに今ある部屋の荷物を詰め込めばいいさ」
「部屋の契約を、切れってことですか?」
OTOWAの血相が変わる。
相当家に愛着があるようだ。
「OTOWAは、一人暮らしだったもんな・・・
自分の城を維持するためには、1年間無駄金を払わなくちゃならなくなる、
それこそ、100万以上のお金を捨てるわけだ、だったら、
お宝だけ持って、さっさと寮に移ったほうが利口じゃないのか?」
今まで何度も言い続けているだろう口ぶりで糸井が、告げる
OTOWAは、どちらが得なのかを、フル回転で計算し始めていた
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