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「あの・・糸井さん・・・俺、今のバンドのメンバーと
ワンマンやる約束してるんですけど」
[EINS]のライブが、迫っていた。
「そうか、”リヒト”はまだ、バンド脱退してなかったんだったね・・
契約をしたのだから、辞めてくるように。」
当たり前のように糸井が言う。
「そりゃそうですけど、でも、なんて言えばいいんですか?
デビューのこと、誰にも話しちゃいけないんですよね?」
「契約上、
ほかの事務所及びバンドに所属しちゃいけないことになっている。
たとえ、インディーズであっても同じことだ。
契約書にサインをした時点で、リヒトは、GOTOプロダクションの所属となるんだから。
今所属のバンドメンバーとは、縁を切ってもらわないとね」
「でも、7年やってきたんです。
いきなり抜けるっていうのは・・
・・・出来ないですよ」
いや。
実際は、大分前から抜けることを想定して行動していた。
俺が抜けても「EINS」が活動出来るように、
ここ数カ月間、
わざと俺は自分が抜けた後の【EINS】を作り上げてきたんだ。
そのためには、リリカの協力が必須だった。
チケットを皆で折半して売ることを拒否すれば
誰もが怪しむ。チケットは今までどおり受け取り、
売り捌いたチケット代としてノブに渡す金は、
リリカに準備させた。
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