Smells Like Teen Spirit

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だが俺は、 糸井マネージャーの言われた通りに従うつもりだった。 もう7年吉祥寺のハコに居続け、 無駄だと思われる日々を過ごし、 この先も続くだろう苦痛と戦うことから解放された事に、 ようやく安堵出来たのだ。 あんなゆるいロックを続けることも、もう無いんだ。 とにかく仕事として、 俺は夢を追いかける場所を手に入れた。 ビジュアル系ロックだろうが、アイドルだろうが関係ない。 自分が目立てる場所。 そして、 大事な恋人に誇れる自分を手に入れることができる。 デビューのニュースを目にした時の みずきの驚いた表情を想像し、ほくそ笑む。 あいつには絶対ナイショだ・・ 最高のサプライズを見せてやる・・・ 思わずニヤついたせいなのか、腕が急に重くなった。 女が腕にしがみついたままだと言うことに気づき、 ハートを飛ばす顔をちらりと見てまたそらす。 その姿に、勘違いしたのか 腕をすり寄せて甘えた声を出し始めた。 糸井マネージャーは、そんなリリカのことなどお構いなしに 「ほかのメンバーはもう来てるよ、さあ、こっち」 そう言い奥へと即す。 リリカの務めるキャバクラの客である GOTOプロダクションの後藤社長を紹介されたのは、 半年前のことだ。 それからすぐにデビューの話を受けたが、メンバーが集まらず 暫らく放置された状態だった。
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