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みずきと残りすべての時間を共に過ごしたかった。
片時だって、離れたくない。
これが・・・自分の夢を叶える代償なのだとしたら。
何も大切なものがない奴らより、
ずっと大きなものを犠牲にしている。
絶対・この業界で生き残ってやる。
そして、
・・こいつを幸せにする。
笑顔を作っていたみずきの表情が、不安げに変わっていた。
俺の頬を撫でる。
小さな手、細い指先。そこに光る俺とみずきを結ぶ証。
みずきの全てが愛おしかった。
頬を撫でる手が擽ったかったが、ミズキのしたいようにさせた。
殆ど受身のみずきが、自発的に何かを求めることはそうそうない。
この機会を逃したら、次は・・・。
考えが收まる前に、ミズキの唇が迫ってくる。
自分が仕掛けるのとは違う、タイミングに少し戸惑う。
耳の奥で、ドクン・ドクンと脈打つのは
多分。俺の心臓の音だ。
みずきの唇が触れた。
体の毛が総毛立っていく。
俺の唇の形を記憶するかのように、
ゆっくりと、重ね合う。
みずきのスローテンポに、合わせたかったが
気分は既にハイレベルを達している。
先程まで抱き合っていたのに、またドロドロとした欲望が疼き始めていた。
小鳥がついばむようなキスを繰り返すみずきが、
唇を放し、頬を赤らめて照れ笑いする。
「ごめん・・すごくキスしたくなったの・・・」
言った言葉と行動に、恥ずかしそうに俯いた。
恥ずかしさを誤魔化すために、食べ終えたお皿を掴み立ち上がろうとするみずきの腕を掴んだ。
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